DELL 株式会社が、2017年9月頃に販売開始をした 27 inch 液晶ペンタブレット「Dell Canvas」が気になっていたらお借りすることができるということで、借りてみました。ちょうど Wacom(ワコム)「Cintiq 27 QHD touch(以後:Cintiq 27 QHD)」も所持しているので、二つの比較も合わせてレビューしていきたいと思います
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1.本体編
「Dell Canvas」が届いてまず思ったのが箱はデカい!が、しかし!「Wacom Cintiq 27 QHD touch」がもっとでかい!
箱を開けると、「Dell Canvas」がコンパクトに収まっています。
本体が大きい割には重量が 8.4kg なので重いというほどでもなく、外フレームの厚み(23mm)とそこまでないので持ちやすく開梱や設置作業にはそれほど苦労することはありませんでした。女性の方でも重さがありますが、そこまで苦労しないで設置できると思います。
パネルサイズは 27 inch の WQHD(2,560 × 1,440 ドット)なので、実際に見ると顔を近づけて描くことになるので少々ドットの粗さが目につきます。
画面加工は、非光沢 Corning® Gorilla® Glass で耐久性があり光の反射をある程度緩和してくれます。色域は AdobeRGB カバー率は 100%、sRGB を 100% カバーしており最大表示色は 10億7,000万色なので、業務用として使用できプロの方でも安心して仕事で使えるといった性能ですね。キャリブレーションに関しては、ビデオカードによって色味が変わったりしますので調節が必要になります。
※「Cintiq 27 QHD」の色域は AdobeRGB が 97%。最大表示色は 10億7,374万色(DisplayPort と 10 bit カラーに対応したビデオカードが必要)
ディスプレイ上の表示において発生する画面のちらつき(フリッカー)は、資料にはフリッカーフリーという項目はなかったので実際輝度を下げて動画撮影で確認したところ、フリッカー特有の縞模様は見受けられませんでした。
※「Cintiq 27 QHD」のちらつき(フリッカー)は、コントラストを100%にしないとフリッカーのちらつきが抑えられないので、フリッカーフリーではない。
ベゼル(外枠フレーム)は「Cintiq 27 QHD」と比較すると縦上の幅が短く、左右に広い感じになります。縦下の幅は特に変わらない感じでした。
「Dell Canvas」の右端には、USB Type – C ポートとヘッドフォンジャックと 2つの標準 USB 3.0 ポートがあります。ディスプレイ出力は左側の裏側にあり、ケーブル接続が簡単にできます。
※「Cintiq 27 QHD」だと、中央裏パネルにディスプレイ入力があり、ケーブルを交換したりするのは少々面倒です。)
出力は miniDisplayPort と mini HDMI、USB Type – C(DisplayPort 対応の USB Type – C)の 4系統になっています。出力に関しては、各規格に合わせたケーブル(USB Type – C to USB Type – C、USB Type – C to USB Type – A、miniDP to miniDP、miniDP to DP、mini HDMI to HDMI)が付属していますので、変換ケーブルはなくても接続は大丈夫です。
標準スタンドのチルト角度は水平から 10度です。実際設置すると思ったより角度を感じることはなくアニメーター机(動画机)で作業をしているようなくらいのゆるい角度に感じます。なので、角度を付けたい人は別売の専用スタンド(約 4万円くらい)を買うか、もしくは10Kg まで対応しているアームスタンド(VESA 準拠の 75/100/200mm マウント対応)を取り付けるという手もあります。
他にも台や積み上げた本で角度調節という方法もありますが、この方法を実際試してみるとディスプレイの下のベゼル幅の厚みが薄いので角度によっては滑りやすく、滑り止めシートを下においてもたまにズレたりして固定されないことが多かったので、あまりお勧めはできません。
メニューは上フレームの右側にあり、フレーム上のボタンを押すと各メニュー項目が画面に出てくるのでタッチ操作で選んでいきます。初期設定が英語の場合は、メニューを押して言語項目から日本語を設定しましょう。
タッチ機能の ON/OFF は上フレーム左側に物理ボタンがあり簡単に切り替えることができます。タッチ性能は 20 ポイントのタッチ認識が搭載されており両手でも同時にタッチコントロールができ、スクロールやお絵描き時の画面回転、拡大縮小でも反応がよく誤作動的なブレもおこらず快適に作業をすることができます。
2.アプリケーション編
DELL から提供されているカスタムソフトウェアがありこれをインストールすることで、デスクトップをより使いやすいようカスタムできるようになります。
他にも Palette という独自の新しいソフトウェアがあり、カスタムフローティングメニューを作成することによりタッチ機能を使ってのメニュー操作ができるようになり、作業の効率性を上げることができます。現時点ではサポートされているアプリケーションが限られています。
ただし、キーの組み合わせでのショートカットには対応しているので、サポートされていないアプリケーションでもショートカット用のタッチキーボードとして機能します。
あとは Windows 10 Creators Update からの機能になりますが、仮想タッチパッドを搭載していますので大画面のマウスを使うことなく作業することもできて便利になりますので、使ってみるのもいいと思います。
仮想タッチパッドの表示方法は、タスクバーを右クリックすると、メニュー欄にありますのでそれをチェック。するとタスクボタンがある通知領域にショートカットが出てきますのでそれをクリックすると画面に表示されます。
3.DELL トーテムデバイス編
ショートカットなどを割り当てられるダイヤル型デバイス「トーテム」が付属しています。ダイヤルメニューを表示させるにはホイールをプッシュする形になります。
このホイールデバイスは、「SurFace Dial」と違ってダイヤル部分を回すのではなく本体自身を回転させるタイプなので、固定ができない分あちこちに動いてしまい少々使い勝手が悪く感じます。
特に「Dell Canvas」を傾けた状態にすると「トーテム」がズルズル落ちしまうので、標準スタンドより角度をつけたい方は、他のデバイスを検討するのが良いかと思います。他にもメニューダイヤルが表示されるまで思った以上にラグがあったり、他の機能に変えようとホイールを押してもダイヤルメニューが出ないこともあったりと、改善が必要に感じました。
4.ペン編
デジタイザーペンは Wacom の EMR(電磁誘導)式を採用した電池レスタイプになります。ただし、EMR(電磁誘導)式は feel IT Technologies バージョンのため Cintiq シリーズや Cintiq Pro シリーズのペンとは互換はありません。筆圧レベルは 2,048段階の解像度があり、傾き検知に対応しています。
ペンは程よい太さがあるのと、重さが約 13g なので軽くて使いやすいです。ペン先の芯は標準装備されているもの以外にも予備としてペン立ての中に入っており、芯は実際の鉛筆の硬さに合わせて H、HB、B の 3種類(各 2本)が付属しています。芯の太さは、Wacom 芯と太さも変わらないので互換性はある感じでした。
1.画面とペンの視差
視差はある程度ありますが「Cintiq 27 QHD」よりは全然少ないです。視差の比較だと Wacom の「Cintiq Pro 13 HD(2015年モデル)」と同じくらいなので、初期値だとポインターが視差の分若干内側にズレるので、調節をしないと絵を描くときに違和感があるかもしれません。
他の機種との比較は、視差が少ない順から
- 1.iPad Pro(12.9 inch、2017年モデル):視差は、ほぼなくアナログで書いてるような感覚で書ける
- 2.Surface Pro(視差はほとんどなく、iPad Pro 並みにアナログで書いているような感覚で描ける
- 3.Wacom Cintiq Pro 16:視差は、iPad Pro や Surface Pro の次に少なく、ここまではアナログで書いてるような感覚で描ける
- 4.Dell Canvas、Cintiq 13 HD(2015年モデル):視差は若干あるが慣れるのに時間はかからない
- 5.Wacom Cintiq 27 QHD:視差は多めなので、慣れるまで時間がかかる
2.ON 荷重
ペン先が触れたことを検出する ON 荷重は、「Dell Canvas」の方が「Cintiq 27 QHD」より力を加えないと反応しにくい感じではあります。ただし筆圧が弱くても途切れることなく描けます。
比較として筆圧が弱くてもペンが反応する順として
- 1.Wacom Cintiq Pro 16:フェザータッチでも超スラスラえgける
- 2.Wacom Cintiq 27 QHD、iPad Pro(12.9 inch、2017年モデル)、Surface Pro、raytrextab:フェザータッチでもスラスラ描ける
- 3.Dell Canvas:フェザータッチでも描け筆圧の弱い人でも安心
- 4.Surface Pro 4:フェザータッチだと線が途切れて筆圧が弱い人には辛い
- 1.Wacom Cintiq 27 QHD だと補正 2 〜 3 で収まる感じ
- 2.Dell Canvas だと補正 5 前後で収まる感じ
- 3.iPad Pro(12.9 inch、2017年モデル)だと補正 8 前後で収まるがゆっくり書くと発生しやすい
- 4.Surface Pro 4 だと補正 10 前後で収まるがゆっくり書くと発生しやすい
- ・視差が少ないので大きさの割にとても描きやすい
- ・思ったより本体重量が軽い
- ・目が疲れにくい
- ・A4 サイズの見開きが原寸でも描けるくらいの大きさなので漫画作業にはいい
- ・画面が大きいのでアニメ業界に多い肘を使ってのクリンナップ作業もやりやすい
- ・タッチの ON/OFF が物理ボタンなので切り替えが簡単にできて便利
- ・アーム等を取り付ける VESA の穴の幅が 75/100/200mm の 3種類なので、アームスタンドが選びやすい
- ・27 inch はやはりでかい
- ・ドットピッチが少々大きめなので粗く見える
- ・専用スタントが別売。海外ではアームスタンドタイプも販売している
- ・角度を付けると滑るのでアームで固定してあげないと机から落ちる可能性あり
- ・ゆっくり書いた時のジッターブレが、「Wacom Cintiq 27 QHD touch」のより強め
- ・トーテムが思ったより使いずらい。
- ・Mac のドライバーがなく、Windows 10 Creators エディションが必要。
- ・Dell Canvas:ペンおよびトーテム対応のインタラクティブなディスプレイ|Dell 日本:https://www.dell.com/ja-jp/work/shop/cty/pdp/spd/dell-canvas-kv2718d
- ・Dell Canvas Palettes ユーザーズガイド:http://www.dell.com/support/manuals/jp/ja/jpbsd1/dell-canvas-kv2718d/dellcanvaspalettes_ug/メモ、注意、警告
- ・ノートパソコン(PC)、デスクトップ、モニタ他 購入 個人向け|Dell 日本:DELL 株式会社
- ・【レビュー】DELL XPS 13 2 – in – 1 ノート型タブレット PC をお絵かきレビューしてみた ♪:https://pine-app1e.com/windows/windows-10/dell/review-for-dell/review-xps-13-2-in-1-201707/
- ・【レビュー】Microsoft の新型「Surface Pro」を借りたので、「Surface Pro 4」からの進化 & お絵描きでどれだけ使えるのか検証:https://pine-app1e.com/windows/windows-10/microsoft/review-for-microsoft/new-surface-pro/
- ・【レビュー】Microsoft の「New Surface Pro」が発表されたので 、改めて「Surface Pro 4」で描いてみた ♪:https://pine-app1e.com/windows/windows-10/microsoft/review-for-microsoft/surface-pro-4-from-viewing-for-painting/
- ・【レビュー】まるで羽毛のような軽さで描ける Wacom ペン搭載 8 inch タブレット PC「raytrektab DG – D08IWP」【Part.1:いじってみた!】:https://pine-app1e.com/windows/windows-10/dospara/feature-for-dospara/raytrektab-dg-d08iwp-20170510-01/
- ・Microsoft Surface Dial がゲームを変える|革新的な PC コントローラー:https://www.microsoft.com/ja-jp/surface/accessories/surface-dial
- ・Wacom Cintiq Pro/ワコムストア:https://store.wacom.jp/wacom-cintiq-pro/16
- ・Wacom Cintiq Pro/ワコムストア:https://store.wacom.jp/wacom-cintiq-pro/13
- ・Wacom Cintiq Pro/ワコムストア:https://store.wacom.jp/cintiq/27qhd
- ・ワコムストア/公式:https://store.wacom.jp/
- ・iPad Pro – Apple(日本):https://www.apple.com/jp/ipad-pro/
- ・Microsoft Surface Pro 4 を購入する|タブレットやノート PC としてご利用いただけます:https://www.microsoft.com/ja-jp/surface/devices/surface-pro-4/overview
- ・新しい Microsoft Surface Pro|超軽量かつ万能。:https://www.microsoft.com/ja-jp/surface/devices/surface-pro/overview
- ・日本マイクロソフト – Official Home Page:https://www.microsoft.com/ja-jp/
- ・raytrektab DG – D08IWP|ドスパラ公式通販サイト:http://www.dospara.co.jp/5info/cts_raytrektab
- ・パソコン(PC)通販のドスパラ【公式】:http://www.dospara.co.jp/
3.ジッターブレ
補正なしだとゆっくり書いたときにブレが生じますが、補正付きのソフトを使えば収まります。CLIP STUDIO PAINT の補正機能を使っての他機種の比較では、
5.描いてみた
実際に描いてみると、画面ガラスがマット加工で無駄に滑りすぎることもなく、アナログで描いてるかのような感触でスラスラと描きやすい印象。特に視差の少なさもあり「Wacom Cintiq 27 QHD touch」より描きやすく作業スピードも上がっている感じがしました。
ジッターブレは、最初の描き始めの時は気になっていましたが、アプリケーション側でペンの補正や速度による調整を OFF にするなどをして調節をするとジッターは気になることなく描け、清書時でもブレることなく描きやすかったです。
ディスプレイのドットピッチに関しては、「Wacom Cintiq Pro 16」や「Wacom Cintiq Pro 13 HD(2015年モデル)」を使っているとドットが見えるので粗くは感じますが、逆に細かいドットピッチのディスプレイだと細かく描きすぎて作業スピードが遅くなったりすることもあるので、このくらいのドットピッチなら許容範囲かなと思いますし、慣れてしまえば特に気になるほどではない感じではあります。
6.まとめ
今回「Wacom Cintiq 27 QHD touch」と比較も合わせて、ジッターブレが若干多めに出る以外は全体的には「Dell Canvas」が使いやすいという印象です。特に長時間の使用では、「Wacom Cintiq 27 QHD touch」では疲れやすく感じていましたが、「Dell Canvas」ではフリッカーがないおかげもあり目の疲れも感じず作業に没頭できました。
ひとつ残念に感じたのはトーテムの使い勝手でしょうか。トーテムを使用するよりタッチ機能を使っての作業の方が、より快適な作業ができます。特に CLIP STUDIO PAINT を使ってのタッチ機能では、iOS 版でも追加されているタッチでの取り消しや取戻しなどが使えるようになって便利になりました。「Dell Canvas」での回転縮小拡大も反応速度がよく「Wacom Cintiq 27 QHD touch」より快適に使えるので、トーテムを使うよりはタッチ機能を使う方が便利という印象です。
検証時は、「Wacom Cintiq 27 QHD touch」と「Dell Canvas」のデュアルディスプレイで行っておりましたが、特に問題なく普通に使えました。ただペンの互換はないので、Wacom の板タブ Intuos Pro や液タブと共用したい人にはペンを取り換えながらの使用になります。
ということで、いろいろと「Dell Canvas」で作業をしてみましたが、全体的には満足のいく出来だったのでこのサイズが置ける方にはお勧めできる製品だと思います。
1.いいところ
2.気になるところ
※ 2018年1月26日:Adobe RGB のカバー率について表記を修正
※ 2018年2月6日:「Dell Canvas」 関連の動画を公開、記事内に追記
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